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高齢者虐待電話相談

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センターからの提言

 
 
※高齢者処遇研究会編『高齢者虐待防止マニュアル』長寿社会開発センター,1997,p46-48を改変 

高齢者虐待というきわめて今日的な社会問題に対応するには、従来の縦割り的な専門的知識や技術では限界が生じます。

そこで求められる有効な方策は、関連諸機関の連携や協力といった横の関係です。しかし、これらの方策は、必要になったからといって急ごしらえに機能できるものではありません。日常的に不断なネットワークづくりが欠かせません。以下、連携・協力づくりを進める上で必要な要件をあげてみます。

(1)職員の訓練

 
「虐待の問題が起きていても、”虐待”という言葉が認知されていなければ、虐待はないことになる」(斎藤学氏)という指摘の通り、現場の専門家が高齢者に対する虐待の存在を認識していることがまず重要です。

その上で、有効な援助サービスの提供が始まります。このような虐待の事実とサービスの連携にとって欠かすことのできない要件の一つは、各種援助サービス機関にどれだけ多くのよく訓練されたワーカーが配置されているかどうかです。

アメリカにおいても、高齢者虐待の分野では、職員の訓練の重要性が主張され続けていますが、優れたワーカーの不足が全国的に大きな問題となっています。

その背景には、不十分な予算ゆえの限られた訓練プログラムしか実施できない現実があるようです。職員の養成・訓練には十分な予算の裏付けが必要なことは当然のことです。

(2)法の執行機関との協カ関係の確立

 
日本高齢者虐待防止センターが実施しているヘルプラインの電話相談の内容をみると、遺産相続や年金が高齢者の意に反して家族・親族に使われたりする財産・経済がらみの介護問題や、単身高齢者がいま住んでいる住宅から立ち退きを迫られ、行き場が無いといった人権侵害問題が数多く寄せられています。

同居の夫や息子に暴力を振るわれ、大けがしているケースや、高齢者の財産や小金をねらった詐欺・犯罪も後を断ちません。これらの問題は、単に福祉サービスで解決する性質の問題ではなく、警察や裁判所、あるいは弁護士による法的措置が必要になります。

今後、これらの問題はますます増えることが予想されます。高齢者の人権と福祉を擁護するために、これらの機関と福祉との連携・協力のあり方を具体的・早急にシステム化することが求められます。

(3)医師・看護師・保健師との協力関係の確立

 
多くの場合、身体的な傷害や精神的な落ち込みの異変を第一に発見するのは地域の開業医や訪問看護師・保健師等の専門家です。

しかし、患者や家族の主訴が狭い意味の病気の治療や看護であるならば、これら虐待と思われる兆候が発見されたとしても見逃したり、黙認しがちです。

今後は、これらの専門家の虐待に対する認識を深めると同時に、虐待予防と虐待解決に結びつく対策としての連携・協力のあり方を確立することが重要です。

(4)通報システムの制度化及び調査・立証のための判断基準・手続きの確立と各機関間の一貫性の確立

 
わが国にも、家庭内で起きる虐待のみならず老人ホーム等の施設内虐待をもあつかう法律ができました。そして、虐待を発見するための通報制度もでき、虐待を発見した場合、どこの機関にどのように知らせたら良いか、ある程度の指針がもてるようになりました。

しかし、いまだに各種機関の間で虐待の判断基準がまちまちであったり、受付け状況や対応の仕方に一貫性がないこと場合が少なからず見受けられ、ときに市民や通報・相談者の信頼を欠いたり、高齢者や相談者の人権さえ侵害する事例すらあります。

このような問題を避けるためには、通報システムを含め、各種機関に共通する実効ある虐待の予防・発見・援助・処遇の方法を、実態に即して検討しておく必要があります。

(5)高齢者基本法の制定—権利救済制度の確立

 
アメリカには、「高齢アメリカ人法」(Older Americans Act)という法律がありますが、そこには高齢者虐待に関する規定を含む権利に関わる条項が入っています。

この法律に基づいて、在宅の高齢者の権利保護はもちろんのこと、ナーシングホームの入所者の権利を守ったり、入所者を弁護したりする「長期ケアオンブズマン制度」、監査のプロセスにオンブズマンが参加して監査の質を高めていく長期ケア施設の「監査制度」などが作られています。

現在、わが国の高齢者は「老人福祉法」によって福祉は守られていますが、権利保障を含む法律にはなっていません。そこで、今日の虐待問題を重視している日本弁護士連合会(日弁連)が介護問題を中心に人権擁護と権利救済制度の確立を図る「高齢者基本法」を提言しています。

わが国にも、このような人権擁護と権利救済を含む基本的な高齢者法の制定が必要になっているといえます。

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